じつは私、この夏から「内なる生物多様性」に関わる授業のコーディネーターに。でも、授業ってどうやって作るの? それを勉強するために全2回の授業を受講した。前回はコーディネーターの内藤さんに、授業をつくるときの注意点を教えてもらったが、今回はその中身の部分。先生は、「閉店後の本屋さんナイトウォーカー」「ココ大ラヂオ劇団」などのユニークな授業を企画している杉浦綾さんだ。
まずは、杉浦さんが心がけている4つのポイントを教えてもらう。
〓 授業の目的を定める:決めたらブレずに最後まで
たとえば「ココ大ラヂオ劇団」は、オリジナルのシナリオ作りに始まり、声優になって声を吹き込み、最終的にラジオでオンエアするまでを体験する壮大な授業だが、ここで杉浦さんがやりたかったのは「ラヂオ劇団をとおして自分のカラをやぶること」だったそうだ。
対する先生は、劇団主宰者と南海放送のDJという超豪華なお二人。快く引き受けていただいたのはよかったが、「作品としてのクオリティを求めたい。声優はオーディションで選び、男女比も調整したい」と言われ、杉浦さんはたじろいだ。素人でもがんばればできる。それをきっかけに、自分のカラをやぶる体験をしてもらう・・・。そんな杉浦さんの思いとは大きくかけ離れていたからだ。
プロであるがゆえの情熱に気圧(けお)され、「相手の言うとおりかもしれない」と杉浦さんも一度は自分の思いを曲げそうになる。が、「いやいや」と自分の原点に立ち戻り、2回目の打ち合わせで先生に理解してもらったという。
私は「ラヂオ劇団」の実際を知らないのだが、話を聞いただけで夢のような授業だと思う。そのウラにはこのようなバトルがあったのですね。
〓 舞台を整える:演出もぬかりなく
舞台とは授業を行う教室のこと。「本屋さんナイトウォーカー」ではジュンク堂に協力してもらい、閉店後がポイントなので閉まったシャッターを開けてもらうところからスタート。店内の照明も最低限にして、エスカレーターも止めてもらい、いつものエプロン姿で話してもらったという。
〓 ココ大でしか受けられない授業を組み立てる:そこに「学び合い」はあるか
公的機関で開かれる生涯学習とも、民間のカルチャースクールとも、専門教育の大学とも違う「ココ大らしい授業」とは何か。つまり、「自分にしか作れない授業内容」を組んでいくことになるのだが、ポイントはのんべんだらりではなく、変化をつけていくことだ。座学の途中から動きを加えてみる、場所を移してみる、参加者同士でふれあうなど。
〓 授業のシミュレーションをする
これは生徒と先生の両方の立場で行う。たとえば生徒さんが入ってきた瞬間、何を感じてもらうかをイメージして、会場セッティングを考える。ホワイトボードを使うのか、そこにどんな文字を書いておくのかなども大事になる。
先生が登場するタイミングや立ち位置なども、ケースバイケースで。あわせて授業中、コーディネーターがどこにいたら先生に安心してもらえるかも考えておく。さらに、先生に質問をしてくれるサクラまで用意できれば完璧だ。
後半はグループに分かれ、メンバーから意見をもらうことで前回考えた授業企画をブラッシュアップし、最後に全員が自分の企画を発表した。直前に杉浦さんの話を聞いただけに、実現に向けての課題がかなり明確になったようだ。
目的をしっかり持っていれば、周りの人がアドバイスをいっぱいしてくれる。これが杉浦さんのシメの言葉だった。目的があまりに独りよがりだと応援団は少ないかもしれないが、いやこの「独りよがり」こそが出発点なのかも・・・。まずは「内なる思い」をみんなに共感してもらえよう、いろいろあれこれ頭の中でめぐらせてみることだと思う。
杉浦さん、いろんなウラ話&ヒントをありがとうございました。
【報告 宮本 幹江】