○三瓶湾の魅力と須崎海岸の4億年+α
三瓶は初めてでした。朝の集合場所の潮彩館から眺める三瓶湾は、これが海かと思えるくらい静かで穏やかでした。
潮彩館のすぐ近くにあるみかめ本館の5階での、最初の授業は「奥地あじ」でした。三瓶湾は、海図では奥地湾となっていることから命名したそうです。先生の宇都宮一彦さんから回遊のアジではなく瀬つき(岩礁にすんでいる)のアジだから脂がのって、金色に輝いていると説明を受け、「フンフン」と思っておりましたが、東京の三越本店で1尾ン千円とうかがい、眼が・になるほど驚きました。
東京・築地では、あの「関あじ」より評価が高いとか…。こういうブランド・アジが育つのも、穏やかな宇和海の賜物とはいえ、最近では小アジの段階で大量に漁獲されるせいか、水揚げが激減しているということです。漁場を守り、海の生態系を維持するためには(と同時に、おいしいお魚を食べるためにも)資源管理が必要と納得しました。
ついで、「ハーブ媛ひらめ」の養殖について、山口正幸さんのお話。「ハーブ媛ひらめ」といっても、「みかんダイ」のようにハーブの香りがするわけではなく、癖のない味になるそうです。このひらめは陸上養殖されており、飼育はコントロールしやすいけれど、設備投資がたいへんだということでした。タイやハマチ養殖の次を狙って、ブランドに育てるという意気込みが感じられました。このような養殖も、リアス式海岸の三瓶湾だからできるということです。
その後、待望のランチ・クルーズ。みかめ本館の朝井社長自ら案内してくださいました。リアス式の静かな湾内を、東京隅田川の屋形船と同形式の船で巡りましたが、須崎海岸など4億年前の花崗岩が褶曲しているさまなどから、地球の大地の動きが現在の環境を生み出し、さまざまな生きもののゆりかごとなっていることが感じられました。船内では、お弁当のほかに山口さんが提供してくださった「ハーブ媛ひらめ」のお刺身をいただきましたが、このようにおいしいお魚が育てられていることに、改めて感激しました。
午前中、船から見た「寝観音」。そのまつげに当たる須崎観音に向かうと、本来は九州まで見える展望ということでしたが、晴れているのに残念ながら黄砂のせいで、そこまでの展望はありません。ガイドの宇都宮とみ子さんによれば、この地域は、かつては陸路より海路が便利で、遊びはもちろん、お医者さんも別府を利用したといいます。宇和海を挟んで、人々は行き来をしていたのです。ちなみに、この地域には「宇都宮」さんという名字の人が多いそうですが、これは伊予宇都宮氏の流れを汲むとか…。
観音様から50メートルほど引き返すと、ウバメガシの林の中に須崎海岸に通じる階段がありました。かつては、松だけしか生えない痩せた土地に、地域の人たちがウバメガシを植え、いまでは魚付き保安林となっているということです。すでに林の中は照葉樹林らしいさまざまな下草が生えています。
286段の階段を降りると、一挙に視界が広がりました。コンクリートの狭い遊歩道から見る磯は、ひじきが生えていたり、小魚が泳いでいます。「亀の手」や「ニシガイ」などの磯の生物も豊かです。切り立った崖や地元の方たちがマンモス岩と呼ぶ垂直の岩石の層でできた島は、かつてゴンドワナ大陸の時代に、現在のオーストラリアと同じところにあった4億年前の花崗岩を中心とする岩石だということです。
なぜ4億年前かというと、花崗岩に挟まった堆積岩の中から、4億年前の生物であるハチノスサンゴの化石が発見されたからだそうです。この4億年の間に生物の世界はさまざまな試練に遭いながら、多様な生命の形を生み出してきたということを考えると、いまのさまざまな「いのち」がすべて愛おしくなります。
さらに今回のオプションは、ご夫婦で作り上げた斜面の庭園「かくれの里」。驚きました。ツツジは時期が過ぎたとはいえ、宇和海を一望する山の中腹にさまざまな園芸種が植えられていましたが、その多くはさまざまな方からの寄付だということです。いつでも誰でも無料で歓迎ということで、ここにも愛媛のおもてなしの心を感じました。来年は花の時期に、ぜひ伺いたいものです。
(報告=むっちゃん)