午前の部:絶景!「無茶々園」の段畑を歩く
雨の天気予報が変わり、明浜町の狩江公民館前に着いた頃は、蒸し暑い曇り空でした。
そこで待ち受けていた無茶々園の阿部さんが、狩浜の浜辺でビーチコーミングしたときに拾ったものを見せてくれました。ヒトデの仲間ではない「クモヒトデ」はじめ、アカウミガメの甲羅のなれの果てなど、想像を膨らませることのできる広いものです。こんな漂着物があるなんて、海の中の生きものたちの世界はどうなっているのでしょう!?
参加者の自己紹介につづき、浜からすぐ近くの小高い山の上にある春日神社へ。かつて海のタコがご神体を守ったということで、タコがシンボルになっていました。ここは照葉樹林に覆われ、あたかも魚つき保安林のようでした。きっと森がゆたかな海を守っているのでしょう。
その先のお墓を抜けると、いよいよ段畑のみかん園です。石灰岩を組んでつくった幅1.5〜2m ほどの段畑が、山頂に向かっています。
無茶々園の柑橘栽培は基本的に、無農薬から低農薬で行っているそうですが、この地では慣行農法で消毒している農家も少なくないといいます。かつては、両者がいがみ合ったこともあってたいへんだったそうですが、いまは、消費者が農薬を使わないものを選択するようになって、情勢は変わったということです。
無農薬での栽培は柑橘を食害したりする害虫を手で退治したりするので、手間がかかります。じっさいこの日も、ゴマダラカミキリを数頭見かけました。それでも、さまざまな生きものと共生しながらの栽培は楽しいと阿部さんは言います。ただし、段畑での「収穫はいやだなあ」ということでした。段畑を上ったり降りたり、腰をかがめたり、とにかくたいへんだと嘆いていました。
それでも、授業後にいただいた阿部さんの栽培したみかんから絞ったジュースは、とても美味しく、疲れもどこかに飛んでしまいました。
午後の部:シーカヤックで明浜生きもの探検!
明浜名物「シラス丼」のお昼を食べてひと休みしたあと、生石灰に水を加えたときの高温を発する反応を利用してつくる蒸し焼き芋「灰屋芋(はいやいも)」の仕込みを見学。これも、明浜町ならではのジオ(大地)の恵みで、1時間半から2時間で蒸し上がるということです。
その後、シーカヤックについて松本さん、上甲さんから説明を受けたときは、ちょっと心配でした。ことに危険な生きものたち(ギンポやガンガゼ、ミノカサゴ、オコゼ、アカクラゲなど)に対する注意があったときは、う〜ん・・・。
でも、浜辺でシーカヤックに乗り込み、パドルを使ってみると、意外に簡単にカヤックは進んでいきます。もちろん、狩浜の海が入り江になっていて穏やかだということもあるでしょうが、それでもこれは「達成感」そのものです。隣を見ると、今回参加の小学1年のやんちゃ坊主も、じつに上手にカヤックを扱っているではありませんか。
波間には2種類ほどのクラゲが漂っていましたが、10分ほどで操船になれると、みんなで上甲先生のあとをついて、人のいない海岸まで1キロほどの小さなツーリング。これは楽しい体験でした。
到着した海岸には、「ウドガイ」の棲み跡のある石灰石(小さな生きたウドガイもいましたが)や、ホンダワラが打ち寄せられていたり、小さな魚がたくさん泳いでいたりしました。短い時間でしたが、このツーリングでは、海は生物の故郷であることが実感できました。
狩浜に帰り着くと、「灰屋芋」ができあがっていました。適当に水分が抜けてホクホクとおいしい出来上がり。このお芋は石灰産業が明浜町を支えていた頃のおやつだったそうです。ご先祖が明浜町の石灰産業の担い手だった宇都宮長三郎さんによる石灰産業盛衰のお話も興味深く、最後は海水を利用した「浜湯」につかって、お開きとなりました。
シーカヤックから見た宇和海の遠くにうかぶ島々、そして山に目を移すと緑色の山に白い石灰岩がとても印象的で、すばらしい体験ができました。
(報告=むっちゃん)