興味津々で申し込んだ授業の始まりです。会場の一角には、様々な水引工芸品が展示されていました。私は、内心「まずいな、不器用な私にできっこない、早まったか」と思ってしまうほど、ひとつひとつの作品の精巧さ、立体の美しさに圧倒されてしまいました。
まずはDVDの映像を見ながら先生に解説して頂き、水引のあれこれを学びました。そもそも、水引という名前の由来は製法説(こより状にした上から水糊を引き乾燥するという工程を繰り返す)、作法説(塵やや汚れを流し去り水洗いした清潔な品物と同じ意味をもたすために用いた)など様々な説があるそうです。
水引の歴史は古く、そのルーツは飛鳥時代。遣隋使小野妹子(聖徳太子によって遣わされた)が持ち帰った、かの国からの贈り物に「くれない」という紅白に染め分けた紐がかけられていたというもの。その後、平安時代に紙の水引が発明され、明治以降に元結の需要が減ってからは「金封」や「結納」「水引工芸品」の開発へと変化させて現在に至っているのです。伊予の水引は、原料や水、乾燥作業に適した地形や気候など、様々な自然の恵みを受け、紙漉と共に発展してきたそうです。
さらに、水引の製造工程も順を追って詳しく説明して頂きました。水糊を引く作業、白い水引が一瞬にして着色される様子、太さの違いを出す行程、裁断の様子など驚きの映像でした。こんなにも手間暇かかるものなのか、大事に使わなくては・・・。
いよいよ実技です。ストラップ作りに入る前に、基本の結び方「淡路結び」のレッスンです。慶弔どちらにも使われる、金封でおなじみの結び方です。先生の手には、水引に見立てた巨大なチューブ様の模型が・・。先生の誘導で輪を作り、その上に重ねて輪を作り、左から右へ下から上へくぐらせて、又くぐらせて引き抜いて形を整えたら、あら〜何とか出来ました。
基本をマスターしたところでいよいよストラップキットを開封。「平結びストラップ」と「スパイラル結びストラップ」の2種類からそれぞれ、あらかじめ選んであります。使用するものはこのキット(色水引6本、円結びという玉2個)とはさみです。キットの中から2色を選び、さらに芯になる一本を二つ折りにします。結ぶ方の水引はやさしく指先をすべらせてなじませ、結びやすくします。
先生は一人一人の結び方を見て丁寧に指導してくださいます。難関は玉をくぐらせて、再び結び始める部分でした。「ここは、ハートの形にします、玉を挟んで2つのハートが出来ますね。これが愛水引、縁結びストラップですよ〜。」なるほど、円結びの玉が縁結びね、と納得。いびつながらも何とかハートができました。
さらに結んでいきます。締めはあの「淡路結び」です。芯と結び4本の水引を同じ長さに切りそろえ挑戦。短い2本の水引を重ねて結ぶのでなかなか難しい。それでも何とか四苦八苦して完成!先生にも褒めて頂けました。切り口にボンドを塗って固めると、切り口からほつれてこないことも教わり、最初の不安など何処吹く風、わくわくの時間が瞬く間に終わりました。
先生方の水引を愛する心が伝わり、気がつけば水引細工の魅力にはまり始めた私。思わずスパイラル結びのキットも買い求めてしまいました。冒頭の水引工芸品の数々、鯉の鱗や花も松の葉も淡路結びを基本にしていると伺い、その奥深さにびっくり。
この授業では、水引を結ぶことの意味、そこに込められた思いを学び、先生方が水引の伝統を守りつつ発展させて未来につないでいくという活動の一部を知ることが出来ました。水引をかければ一段と加わる重み、お互いの心が通い合うこの国にしっかりと定着した美しい風習・・これからも伊予の地に脈々と引き継がれていきますように。
自然からの恵みを大切にしていきたいと思います。おかげさまで、また一つ良いご縁を結ぶことが出来ました。貴重な体験をさせて頂きありがとうございました。【A.Y】