日本名作シナリオ選
映画で最も大切なのは?と尋ねると、出演者や演出、演技力、編集と言われますが私は「脚本」と答えます。その理由は「映画の分母」だからです。脚本の良し悪しが演出も演技もカットも全てに影響すると思っています。脚本がよくて諸々で残念な作品になる場合はありますが、悪い脚本から良い作品は生まれません。
脚本は小説とは異なります。小説は「情景や感情、表情」まで記載されていますが、脚本は「場設定、動作、セリフ」だけです。「情景や感情、表情」は「監督による演出」に含まれます。なので仮に主人公が左利き、仕草にクセ、好物ありという設定があったら監督が設定しているかもしれません。
物語としては「とてもシンプル」な脚本。脚本を書く人を脚本家といいますが、その職能集団が「協同組合日本シナリオ作家協会」です。先頃、そのシナリオ協会が「日本名作シナリオ選」という書物を刊行したことが話題になりました。
これは以前に「日本シナリオ体系(全6巻、127篇)」として編集された中から、特に後世に伝え残したい21篇を選び「日本名作シナリオ選」として復刻という位置づけで発行しました。21篇の各篇にはそれぞれ現役の脚本家が解説しています。
収録作品は以下の通りです。名作と言われるだけあって、50年以上前の作品もあります。一つ愛媛繋がりでいえば「無法松の一生」で伊丹万作氏が挙がっていること。愛媛は伊丹万作氏、伊藤大輔氏の故郷ということを、この本から感じていただければと思います。
「盤嶽の一生:山中貞雄」
「無法松の一生:伊丹万作」
「野良犬:菊島隆三 黒澤明」
「羅生門:黒澤明 橋本忍」
「本日休診:斎藤良輔 」
「東京物語:野田高梧 小津安二郎」
「近松物語:依田義賢」
「夫婦善哉:八住利雄 」
「浮雲: 水木洋子」
「真昼の暗黒:橋本忍」
「豚と軍艦:山内久」
「切腹:橋本忍」
「にっぽん昆虫記:長谷部慶次 今村昌平」
「飢餓海峡:鈴木尚之」
「総長賭博:笠原和夫」
「少年:田村孟」
「砂の器:橋本忍 山田洋次」
「新幹線大爆破:小野竜之助 佐藤純彌」
「祭りの準備:中島丈博」
「幸福の黄色いハンカチ:山田洋次 朝間義隆」
「鬼畜:井手雅人」